油圧ディスクブレーキとかなんとかかんとか

油圧ディスクブレーキに関する個人的な感想を書いてみる。

輪行に難あり、または輪行は不可能という幻想

自分もVブレーキから移行した当初(2010年頃)はそう思っていたが、実際やってみると慣れの問題で、輪行は油圧ディスクブレーキを忌避するための決定的な要因にならない。

片道で1回と数えた場合、300回くらいは輪行していてもう今や何が問題なのかわからないくらいである。14年でたったの300回となると1回/月くらいしか走りに行ってないということになる。多いときは3回/月のときもあったが、特に2020年以降の走行回数は極端に少ないので残念ながらそんなものだろう。

強いて何か挙げるとすれば、パッドスペーサーポロリの件か。これは、輪行中にパッドスペーサーが脱落し、うっかりブレーキレーバーを握ってしまうとかでピストンが不必要にせり出してローターが入らなくなる問題である。パッドスペーサーにはピンを挟み込むための仕組みが実装されているが、連続使用によって噛み込みがゆるくなる場合がある。その状態で自転車を運ぶとまれにスペーサーが脱落する。

これは確かに油圧ディスクブレーキ特有の考慮点で、自分は独自の「ポロリ完全防止システム」によってこれを解決することができた。

「ポロリ完全防止システム」
「ポロリ完全防止システム」

本システムは、パッドスペーサーの意図せぬ脱落を完全に防止するため独自に開発したものである。

パッドスペーサーはシマノXTR様(BR-M9120)の付属品、面ファスナーはMucky Nutzのフェンダー付属のものが余ってたのでそれを流用。幅10mm (転がってた金尺で計測) x 厚さ0.516mm (ミツトヨ デジタルマイクロメーターで計測)。今回はオープンソースとして本システムの仕様を公開したので、パッドスペーサーポロリ問題に苦しんでいる方は自己責任で試して欲しい。

なお、本システムに関する質問が来たら無視するので、各自頑張って取り組んでいただきたい。

システム稼働中


ミツトヨ デジタルマイクロメーターで正確に計測した気分になる

メンテナンスが難しい・手間がかかる

マニュアル読もう。あと、ミネラルオイルは吸湿しないのでオイルの交換間隔は長めで良いらしい。自分はDOTのやつを使ったことがないのでわからない。DOTの製品を使ってる人に聞いて下さい。

ちなみに自分は鉱物油ではなくヒマワリ油を入れて使っている。シールが痛むとかいう障害は発生していないし、性能が落ちるという印象もない。このXTR様は購入から5年、もう数年前に保証が切れてるので壊れたら仕様通りに使っていても買い直しになるため問題なし。

ブリーディング時のエア抜きが不十分だと、レバー側を下にして輪行後、元の位置に戻すとブレーキフィールがスポンジーになることがあるが、ホイールをセットした後に何度かレバーを引いたり戻したりすればOK。

補足

もうだいぶ前から多くの人が言っているとおり、MTBでは10年以上前に結論が出ているところを、別の界隈で新たな話題として盛り上がっているようだ。「リムブレーキ vs ディスクブレーキ」から「ワイヤー引きディスクブレーキ vs 油圧ディスクブレーキ」に関心が移りつつあるようなないような、よくわからない状況と噂で聞く。自分は昔のMTBに詳しくなく、ほぼ決着した後から乗り始めた新参者なので、そういう議論が活発だったことを知れるのは興味深いしありがたい。

Lewis LHTというTrickstuff Maximaそっくりさん

 Lewis LHTというTrickstuff Maximaそっくりさんがちょっと話題になってるみたい。

某代理店等は普通に紹介してたけど、「Trickstuff Maximaインスパイアード」「Trickstuff Maxima系」くらいは言っても良かった気がする。日本ではさほど有名ではないみたいで、「二郎インスパイア系」の元祖が存在することを知らないような、そんな種類の反応をいくつか観測した。

「本家」Trickstuff Maxima


Trickstuff Maximaインスパイア系

Trickstuff Maximaの外観を真似ること自体の法的問題はよく分からんので、そういったことは当事者にまかせておけば良い。LewisがTrickstuffの何かを侵害したという主張をする人は、具体的に何をどう侵害したのか根拠を示す必要がある。

自分のような買うつもりもない傍観者としては、性能と品質が良ければ買いたい人は買えば良いと思う。本家にないいくつかの便利機能が追加されて価格は半分くらいだし。

「外観を参考にしてはいるが有用な機能を追加した別物」

YouTube動画とInstagramの投稿への返信を一通り眺めてみたけど、外観を参考にしたことは概ね認めているようだ。MaximaだけでなくPiccolaも。ハッシュタグ山盛りで、なんとも表現しづらい感じの投稿である。

ブリーディングのしやすさとか当たり調整機能の追加とか、本家Trickstuff Maximaに存在しないいくつかの改良点があるので、「Trickstuff Maximaにインスパイアされ、不満に思っていた部分を改善し、なおかつ価格を低廉に抑えた優れた製品である」と堂々と主張するのであればとても良かったと思う。実際、YouTubeやInstagramで見かけたLewisからの返信もそんな感じだし。

第2世代のブレーキは独自のデザインになる

2023-09-05の投稿にある2023-11-08の返信には、Lewisは現在第2世代のブレーキを開発中で、そちらは独自のデザインになるとしている。なので、最近日本で目に入るようになったMaximaインスパイア系ブレーキは第1世代で、次世代でついにLewisの本領発揮ということになるようだ。その取り組みに期待したい。

Pinkbikeの記事について

Pinkbikeの記事は取材をせずインプレッションだけの記載になっている。そのためか、根拠を明示しないで「著作権ガー」とか不毛な投稿があったり、ちょっと人種差別的な風味のする罵り合いがあったりしてなんとも微笑ましい。

「パクリ云々を言うならタイヤのトレッドパターンはどうなんだ」とか、ほかの話を混ぜたがるコメントもちらほら。

Pinkbikeの記事は、「Patented」と「patent-pending」が混在していて分かりづらい。サマリーのところは「Patented」だけど、本文はそれらを「patend-pending」と説明している。もうちょっと正確に書いたら?と思う。

販売店の態度はちょっと不思議

外観を手本にした先行製品があるわけだから、その説明を省略してプロ驚き屋的仕草で売り込むのはあまり誠実な態度とは思えない。ここでもおそらくタイヤのトレッドパターン的な話になるのだろうと想像。

余談

Twitter (aka X)で、Lewisが攻撃的な反応をしているという投稿があったけど、今のところそのようなものは見つけられなかった。Lewisは「似てるかもしれないけど違う」を繰り返しているだけで、至って冷静な内容である。攻撃的な反応の例があったらぜひ知りたい(スクショがTwitterで見つかったけど、Instagramでは該当するコメントが削除されてしまったという噂)。

自分は2021年4月に、納期が18月くらいとされていたTrickstuff Maximaをメーカーに注文したんだけど、結局2022年10月にキャンセルした。スペアパーツ等込みで1030.92ユーロ。

WiggleCRC倒れる

Wiggle ‘up for sale’ with Chain Reaction heading for administration - BikeRader

Wiggle Chain Reaction Cycles put up for sale as it enters administration - Cycling Weekly

先日、親会社の親会社が約束していた資金を支払わなかったためヤバいという話があったばかりなのに。

Bike24が気になったので調べてみたらだいぶ前に買い戻されていたとのことなので影響なし。

「CRCでHopeが見つからん、おま国規制か?」という投稿を見て、そりゃねえだろと思って仕向地をUKにしてHope製品を探したところ完全になくなっていた。Wiggleも同様。Hopeは商品を全部引き上げたのかもしれない。

なかなかドイヒーなシマノ製クランクリコール問題

もうすでにあちこちで話題になっているシマノ製クランクのリコール問題。"Voluntary Recall"は日本では「無償点検プログラム」と呼称している。実質的にはリコールと言っても良いだろうけど法的には(?)リコールではない(経産省のリストにも掲載されていない)。

4,519件の事故報告があり、うち6件が傷害事故であるそうだ[CBS NEWS]。負傷事故が日本で発生しているのかいないのか分からんけど、リコールではなく無償点検プログラムとしている理由はその辺にあるのかも。

製品不具合などさほど珍しいことではないし、出荷数が280万本に対して事故の報告は1%にも満たないのだが、こんな騒ぎになっているのはやはり長期間放置したことが大きく影響しているだろう。なぜ今ごろ?という当然の疑問に答える発表は2023-09-23時点で何も発表されていない。

ここではBikeRadarの記事を写経しつつ感想を述べてみる。日本での対応がどのようになるかの比較にどうぞ(ただし、これはBikeRadarの記事に筆者が感想を述べているだけで、北米での対応も今後正式発表によって変化する可能性はある)。

リンク色々

そんな昔のクランク捨てちゃったよ!

シマノがこの問題の解析とリコールまでに時間を要した結果、自費で交換して欠陥品を捨ててしまった人がいるはずで、そういう人は当然今回のリコールで保証を受けられない。

Prior to this recall, cranks that failed out of their original warranty period may not have been replaced. This meant many riders were forced to purchase new cranks.
Neither statement includes details on whether these riders, who have previously replaced cranks due to a failure, would be in line for new cranks or other compensation.
When asked for clarification, a Shimano spokesperson said: “If [a rider still has the] affected crankset… it will be considered as a new case and can be taken to the dealer for inspection. If it [has been discarded], Shimano won’t take any action.” [BikeRadarの記事から] 


自分はロードバイクに乗らないので今回のリコールとは無縁だけど、6段目がゴリゴリうるさくて振動が酷いXTR様カセットを持ってるので、とりあえず捨てずに取っておこうと思う。

ちょっと心配なのはアメリカで集団訴訟を起こされるかも知れないという点。シマノは"Voluntary Recall"と言ってるけど、長期間放置を当局に非難された「自主」回収だったとしたら結構痛い。そんなことはないと願っている。

原因は不明

「体重のある/パワーのある人に多くみられる傾向なので、ほとんどの人は関係ない」なんていう見解もあるけど、シマノが公式に原因を発表していない段階(2023-09-23 11:12 JST時点)でそのような憶測は危険。何らかの相関があるとしても、因果関係を説明できていないのでやめたほうが良い。

パワーメーターが付いてる場合は$300..$500の返金

自分はパワーメーターなんて使ったことがないのでよくわからないんだけど、一度取り付けたら容易に取り外せないものが多いらしい。それ故、サードパーティのパワーメータを取り付けたクランクは、交換時にパワーメーターを返却しない代わりに$300から$500の返金をするということのようだ。

Riders will then be issued with a rebate of $300 to $325 ($400 to $430 CAD) for single-sided power meters. Dual-sided power meter owners will receive a rebate of $500 ($650 CAD). Details are to be announced for the UK and other territories. [BikeRadarの記事から]

点検に協力したショップには協力金$75

リコールに協力したショップには、1検査あたり$75の支払いがあるという。もっとも、検査全体に必要な人件費等を考えると$75では赤字になるとするショップもあるらしい。

Tommy Barse, owner of Cutlass Velo in Baltimore, Mayland, believes Shimano is asking too much of shops for the $75 fee.
“An inspection involves greeting the customer, getting their information, removing and cleaning the cranks for inspection, producing documentation and photographs and… submitting information through a portal on the B2B site with nine fields,” says Barse.
He believes “$75 is a slap in the face”. [BikeRadarの記事から]

代品を取り付けて使ってもらうのか、あるいはショップの預かりになるのか、ショップ次第だと思うけど、日本で同じことをやったら脱着と検査に手間はかかるし預かるには保管場所が必要だし、零細ショップはかなり辛そう。
あと、交換するとしてもシマノに対策品の在庫がある保証はなく、納品が遅れればそれだけショップの在庫場所を圧迫するんで、仮に1検査1万円もらっても割に合わないというのは理解できる。

他の残念製品は?

ところで、この残念ハブの件はどうするんだろ?これも欠陥みたいだけど、こっちに関してシマノは放置する予定なんだろうか。

M/LサイズのHeadlinerが売り切れで困っている人はXL/2Xを買えば良いという話


2019年に買ったと思われるこのTroy Lee Designs A2、パッドがヨレヨレになったので交換部品を注文しようとしたら売り切れ。日本の代理店にもスペインのオンラインショップにも米アマゾンにもない。

仕方がないのでものは試しとXL/2X用のものを買ってみたら上の写真の通り意外と悪くなかった。結構派手に余る部分はあるものの、額の部分が大きくズレているとかそういう致命的な問題はなく、これで十分に用を足しそうに思える。被ってみても違和感がない。
見ての通り橋のほうが結構余っているので、ベストフィットを求める場合はやはりM/Lの入荷を待つべし。

米アマゾンにはまだ10個以上の在庫があるようなので、M/Lサイズのパッドを探している人はどうぞ。

シマノFC-M8100を試す

Hopeで170mmを試すとか155mmを試すとかやっていたが思い立ってXTクランクセットを取り付けてみた。他の方が使用しているのを実際に見たことがあるブレーキキャリパーと比べると、このクランクアームは一見してあまり目を引くものがない。


2ピンチボルトでの取り付けが容易

やはりピンチボルト2本での取り付けは簡単。軸にレンチを突っ込んで取り付けるタイプのクランクは50Nmとか昔のHopeの75Nmとか、バカみたいな力を必要とするのでメンテナンススタンドに挟んだまま作業するのが少々不安。XTR様も次世代からまたもとのピンチボルト2本方式に戻してほしい。

Wolf ToothのDrop Stop STで軽量化

170mmクランクアーム単体で500g台前半なので、この価格帯のクランクセットとしては非常に軽い。30Tリングで622gというのが公式発表だが、XTR様との差別化のために敢えてクソ重いチェーンリングを設定していると思われる。
WTC Drop Stop ST(30T)との組み合わせで584.5g、XTR様は長さ不明30Tで545gだそうなので、40g程度の差に収まった。Qファクター168mmのXTがあったら差はもう少し小さくなるのでは?
このチェーンリングはアメリカに注文して2日で手元に来た。DHLを使っているので送料もそんなに安くないと思われる。原価は一体いくらなのだろうか?

LT-FC41が同梱されない

以前XTR様を購入した際にはLT-FC41が付属していたが、現在は別売りになっているようだ。たまたま見かけたMTB系の掲示板でも同様の話題があったので、ある時期から工具の添付をやめたものと思われる。

表面処理は相変わらず弱いらしい

XTR様もなかなか傷がつきやすかったが、XTもBike Radarのレビューでは側面の保護シートを突き破って派手に地金が露出している。自分の場合はこんなにハードな使い方をしないと思うので、運搬時のちょっとしたミスでつまらない傷をいくつも入れる程度だろう。

酷い円安のせいで、シマノ製品を外貨換算するとかなり安く感じる。もうあまり海外から高額商品を買う機会がないけど、このままの水準で良いとは思えないので早く110円台くらいまで戻してほしい。

ロックリング工具たくさん

 諸事情でロックリング工具が増えた。

左から、シマノTL-LR10、Birzman Lockring Socket 12mmPark Tool FR-5.2GT、シマノTL-LR15、IceToolz #09C2


Hope Pro 5ハブのカセット取り付け問題に対応するため、TL-LR15が見つからず、Birzmanの物を購入したものの、こちらは芯棒がすっぽ抜けるマヌケな欠陥設計であった。ショップを通して代理店に確認したところ、「芯棒外しても使えるようになってますよ」的な、いかにも取ってつけたような残念な説明だった。
これが「芯棒を外しても使えます」な、大変便利な思いやり設計ロックリング工具。まあ、代理店の主張通りなら、その設計思想は端的に言って💩。5mmの工具でも「外して使えます」みたいなことを言うのだろうか?Park ToolもIceToolzも、ボルトでガッチリ固定してあるので安心感が高く「外して使えます」的な雰囲気はない。

代理店の主張はそんな感じでゴミのようだったが、ショップの対応は非常に丁寧で好印象だった(以前から利用している大阪の店で、最近は多少高くてもそちらから買うようにしている)。結局、370℃のコテ先で指をちょっぴり焼いたりしながらハンダ付け(のような措置)を行って芯棒を固定しておいた。

12mmであっても、TL-LR15で十分用を足すが、IceToolz #09C2の見た目とソケットレンチ対応という点が気に入って使っている。

油圧ディスクブレーキとかなんとかかんとか

油圧ディスクブレーキに関する個人的な感想を書いてみる。 輪行に難あり、または輪行は不可能という幻想 自分もVブレーキから移行した当初(2010年頃)はそう思っていたが、実際やってみると慣れの問題で、輪行は油圧ディスクブレーキを忌避するための決定的な要因にならない。 片道で1回と数...